レポート > 演劇・映画 > 自粛からの復帰一発目なのに辛いテーマのお芝居観劇という話

自粛からの復帰一発目なのに辛いテーマのお芝居観劇という話

3月末からずっと、新型コロナウイルス感染症の状況を鑑みてこのブログに書くようなイベントは自粛してきたんだけど、6月に入ったらやや落ち着いた感。緊急事態宣言も解除されて、そろそろかなーと。

7月頭に大和田紗希さんが出演する舞台があったんで、思い切って行ってみた。

なかなか重いテーマで、こういう時勢にこういうの観ちゃうカタルシス。

北千住駅から劇場へ向かう道すがら、よさげなレトロふうの喫茶店があったんで飛び込んだら、運悪く閉店時刻直前で追い出されてしまった。新たな店を探す時間もないので、コンビニでゼリー飲料を買い、小雨の中を歩きながらすすって空腹をごまかした。

劇場到着。スタッフさんに消毒液を手に吹きかけられてから入場する。チケットの会計も手渡しじゃなくトレー経由で。コロナ対策たいへんそう。

中へ入ってみると、舞台が広い。奥行きもあってかなり広~い。大劇場っていわれるものを除けば今までで一番広いんじゃないかしら。ビル地下の打ちっ放しフロアをそのままステージにしてるような感じで、中央あたりにドーンと柱があるんだけどあんまり気にならない(演出上も柱そのままで、役者が柱の回りをぐるぐる走り回ったりしてた)。天井はそれほど高さがないんだけど、ソーシャルディスタンシングで座席間隔があるからか、圧迫感はそうでもない。

これもコロナ対策の客数制限のため3列しかない座席の、最後列へ。やっぱり席運は悪くて、舞台中央の視界を遮る斜め前に座高の高い大柄なおっさんが後から来た(苦笑)。

『花瓶の中の海』
2020/7/9 19:00〜 Vaseチーム 北千住BUoY
主催 TOKYO笹塚ボーイズ
作・演出 川上一輝
キャスト 中山佳子 / 林原翔 / 川端康太 / 本田和大 / 西野裕貴 / 上野陽立 / 立野太志 / 大嶺智沙都 / 川上一輝
【Seaチーム】
土方晴子 / 郡知子 / 栫井里聡 / 竹下玲奈 / 飯野智美
大作安里奈
【Vaseチーム】
大和田紗希 / 芥川唯奈 / 明石渚 / 池内明世 / 大久保若奈 / 日高里彩

問題を抱える子供たちを保護する施設【見城スクール】を舞台に、そこで生活する子供たちと、彼らを見守る職員の心の葛藤を描く。
職員の優作は日々、子供たちの生活を見守り、彼らが自立して生活できるようにサポートしている。
ある日、さちこという女の子が頻繁に遊びに来るようになる。
彼女と話すうちに、誰にも打ち明けられない深い闇が、彼女には存在していることに気づき始める…。

お話の舞台は児童養護施設。ネグレクトや性的虐待被害の子を預かってるところ。子供たちや職員が(演劇だということを考慮しても)妙に明るいのが、バックにある暗さのカウンターで逆に頭キーン!とする。おとなしさが際立つ子供たち、基本的には温厚な大人たちが、ストレスに苛まれてバーン!と爆発する瞬間の胸の痛さとか。

主役的な立ち位置のキャラクターはいるんだけど、感情移入する対象じゃなく、劇や観客はその子を見守っている周囲の人々の視点寄り。だから自分が痛めつけられるんじゃなく、周囲が痛めつけられる横にいる感じで、そこがまた辛い。

途中朗読される詩の語感は鋭く重く、合間にたまに現れるフツーの言葉はあたたかく。

大和田さんは、奔放で気の強そうな「施設長の奥さん」役。過去のお芝居でもそういう雰囲気の役は多い気がして、たぶん外からみたときはそういうんなんだよね。そしてそれはけっこうハマってたと思う。「あのセリフ」は、アイドルオーディション候補生しか知らないmysta勢にはキツかったんじゃないかな。僕は音声データほしいくらいだったけど(笑)

性被害に合った少女役の池内明世さん、弱々しさと固さの入り混じった部分がとても印象的だった。小劇場ならではの演出でもあったろうけど、あそこまでやるのは役者然り演出然り、よくトライしたと思う。

林原翔さん、ああいう「うるさいガキ」の役は苦手なんだけど、騒いでるときからもうすでに重要キャラ感は滲み出てて、そういうのからのギャップ含めた最後の詩の朗読はすばらしかった。

彼ら含め、登場人物たちの年齢設定が難しかった。大人の役者が演じているという事実と、設定、演技としての年齢、どのあたりなのだろうかっていう。ある意味こっちに投げられてるんだと思うけど、カチッとハマって観るんじゃなく「いくつくらいだろ?」って考えながら観ちゃってた部分があって、そこはうまく観られなかったかなと。

そういう難しさとは別に、感情移入する先が見当たらなかったのもあった。年齢等で一番入りやすそうなのは施設長だけど、ああいう面は僕には遠いのでちょっと違うし、かといって他のキャラもそう。そういう部分があったから、没入するというより批評家みたいな視点になっちゃってた時間が多かった。演技や演出以外の部分でそうなったのは珍しいかも。

とはいえ、ストーリーは楽しめたし、最後への(表面的のじゃなく物語的な)盛り上がりも堪能できた。楽しかった!っていう感想の作品じゃないけど、観劇の楽しさは十分感じられた。

終演後の役者との面会時間は「短めに」って話だったけど、僕がアンケート書いてるうちに他のお客さんとは済ませたのか、大和田さんとはへんに混んだりはせずにさらっと話せた。それでもやっぱり長居しちゃいけないって意識があったけど。

観劇からブログに書くまでこんなに空いて文章もいつも以上に散文なのは、自粛期間のせいでルーティンをこなせなくなっちゃったせいってことで。