心地よい言葉の渦に溺れる話

舞台は出演者目当てで観に行くことがほとんどだけど、 劇団ハーベストはちょっと違う。『グループとしての彼女たち』の表現を観に行く感覚。

劇団ハーベスト第9回公演
『起死回生スウィングバイ』
2016/3/25 19:00 下北沢・小劇場B1
【脚本】小林佐千絵(劇団レトロノート)
【演出】中村公平(劇団レトロノート)
【出演】劇団ハーベスト(青山美郷・山本萌花・加藤梨里香・高橋紗良・布施日花梨・松永ミチル・望月瑠菜・川畑光瑠・弓木菜生・宮武佳央・井上結愛・葛岡有)
[ゲスト] 吉村京太、小野木里奈

言葉を飲み込んでしまうクセのある役者志望の女子高校生・ハルが、とある劇団に関わることで、ハルだけでなくみんなが飲み込んでいた言葉があふれ出てくるようになるお話(←雑な説明)。

『言葉』がテーマになってて、それがもうどストライク。こんな文章書いてるし、現場で発するのもケーハクさが先に行くタイプだからそうは思えないでしょうけど、こう見えても『言霊』とかけっこう考えちゃってる方なのですよ。だから、ステージの装飾見ただけでもうぐいぐいっと、入り込んでしまう感じで。

下北沢駅からいつもの方角へ歩いて、小劇場はすぐ。地下1階へ降り、ざわついてる方へ。今回の前物販は客席じゃなくて、入口前でテーブル出してやってた。この方が買いやすいけどちょっと複雑。とりあえずパンフレットと、発売するよって聞いてた前回公演『MIRACLE8』のDVDを買う。

ステージは正方形のダイヤモンド、2辺が客席に接する形で、頂点が客席へ張り出すよう。客席にも段差があって、前に座ったのが座高高い人だったけど問題なく見やすかった。平日だったせいか、観客はこの前の『収穫祭』に比べてもヲタ色が薄かったみたい(やたら笑いの沸点が低いガハハ笑いが一人いて思考のジャマだったけど)。

主役のハルを演じた青山さん。メンバー最年長だけど、自信なさ気な後輩を自然に演じてて、僕が観た過去公演での印象とはずいぶん違った。いい意味でホント自然。無個性寄りのキャラクターが徐々に主張していくようになるんだけど、ちゃんとひと続きのそれで、いくつかの「越える」瞬間のエネルギーも強くて。観客が応援したくなる主人公を、ちゃんと応援したくさせてくれた。

青山さんにはそういう僕のなかの意外性を感じたけど、多くのメンバーはこれまで知ってるイメージに添うような役柄で、たぶんそういうのは意識したキャスティングだったんだろうなあ。

山本さんは劇団のリーダーで、ゲストの小野木さん演じる元劇団員と対立して、その関係がお話の真ん中にある。知らずに周りを傷つけてたことを知って自暴自棄になるのが、一見押しの強そうな雰囲気の彼女にぴったり。パンフには外で客演したときのことが書かれてるけど、ここではやっぱりこういう役になるんだろうね。そしてそれは、僕は好き。小野木さんは年代はメンバーといっしょということだけど、大人っぽくて他にいないタイプ。ゲスト出るの知らなくて、最初「えっ、誰??」って混乱した。

望月さんは男好きの匂いを漂わせるスレた方向の役。性格キツめの。松永さんは劇団の脚本担当、どっちかといえば真面目で理性的、ちょっと腹黒。加藤さんは朗らかでプラス思考、といった具合。

言の葉を紡ぐシーンの応酬は、そういう表立ったキャラクターの内面が爆発して、すごく気持ちが揺れた。望月さんの「役者を続けることの葛藤」と、演じる彼女たちの役者としての素の部分とを勝手に重ねてしまって。言葉の応酬が、僕の席が、向かい合う二人の松永さんの真後ろ。その松永さんの涙声が、顔が見えないことが逆に想像を膨らませてしまって、ぼろぼろ泣いた。

加藤さんの「続ける」覚悟、赤いくつの比喩もそうだけど、何より彼女の歌声とダンスに見惚れながら、歌とダンスが美しければ美しいだけ悲しくて、すっかり聞き惚れたいのにそうできない複雑な感情。

妖怪(?)の5人は、シリアスな劇団員パートに対するユーモア担当だったと思うんだけど、主線から外れる部分だけにもうちょっと掘り下げてほしいというか、彼らを主人公にした別のお話を観てみたいと思った。それぞれバックグラウンドはたくさんありそうで。宮武さんのジョバンニの思わせぶりなところは特にそう。

たかさらさんはもうああいう、「おりゃぁぁああ!」的な役柄でケッテイ!ってことでいいんだろうか。日花梨さんの「ございますわよ」的なのも、光瑠さんの「エッヘン」、弓木さんの「キャハ♡」もそう。どーなんだろ。おもしろいからいいけど。

新しく加入してハーベストとしては初舞台だった、井上さんと葛岡さん。他のメンバーと違って新顔なので、出てくるとつい「あっ、新人さんだ」って思っちゃうのはこっちの問題(苦笑) 演技はやっぱり新人さんらしく、他のキャストより過緊張だったり、表現にぎこちなさはあった。でも(たぶん一番練習しただろう)大事なセリフのところは、おっ、と思うような雰囲気。長身で気の強そうな井上さんと、ちっちゃくて愛嬌のある葛岡さん、それぞれの個性はハッキリしそうなんで、今後楽しみだなあ。

唯一男性の吉村さんは、霊感のある図書館司書。飄々として根はやさしい兄的ポジションを楽しく演じてた。こういう役が大事よねえ。年下の女の子たちにイジられても絵になる雰囲気。フレーズの短冊を飾るときの語りのシーンは、じわーっと染みる感覚がすごく好き。

群舞も含め、それぞれが合わせて動くのじゃなく、てんでバラバラに踊ったりセリフを発しながら、それが総体として一つに感じられる演出は、観る方はたいへん(笑)なんだけど、複数の感情が同時に押し寄せてくる圧倒さとか、関連していないようでしてる言葉とか、いっぱい浴びて心地よかった。それが最後の全員でのアレで、どーん!と、どこか爽快な気持ちで。

心の琴線に触れるセリフが多くて、中盤あたりからずっと目は湿ってたんだけど、最後までそのまま、でも思わず笑顔が浮かんで終える舞台だった。ブラボー!

終演後はちゃっちゃっとアンケート書いて退出。出たところでみんな帰らずに何かを待ってるふうだったけど、まあいいやと帰宅。

ハーベスト、やっぱいいな。

買った『MIRACLE8』のDVD、ダブルキャストの僕の観てない方も収録されてるんで、かなり楽しみ。すぐ観るとこっちの感動とまざっちゃうから、ちょっと間を置いて観るつもり。

…その前回公演のとき買った、前々回公演『明日の君とシャララララ』のDVDも、実はまだ観てなかったりする。観劇したときの印象がよすぎて、「観るならちゃんと環境を整えて観たい」とか思ってたら、そんな環境なかったので(笑) 観なきゃなぁ。

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