小さなカフェでの朗読劇の話

舞台を観に行く機会はだいぶ増えたけど、朗読会っていうのは珍しい。でももともと読書人間だったから抵抗はないのだ。

「歳をとった鰐の話」
大和田紗希+赤星昇一郎
2016/2/9 19:30~
Reading Cafe ピカイチ (※怪優・赤星昇一郎が店長を務める下北沢のマッチボックスシアター)

20160209_pikaichi

下北沢駅から徒歩5分で、シアター711のすぐ手前。外観はかなりおしゃれ、入るのに躊躇しちゃうくらい。ガラス越しに大和田さん(この記事での呼び方はとりあえずこれで統一)と目が合って「どーもどーも」って、やっと入る。

大和田さんはお客さん数名(どうやら常連さん)と談笑してたみたい。コートを脱いで席へ。仕事帰りの僕の格好を、「今日はシュッとしてますね」と冷やかされる。前に会ったのは真夏で、機能性アンダー+シワ加工シャツ+短パンのヒドい姿だったので、それで覚えられてたなら弁解の余地はない。

赤星さんに尋ねられ、看板メニューのホットチョコレートを注文する。店長とはいえ役者さんにドリンクオーダーというのはちょっと不思議な気分。

はじまるまではまだ時間があったんで、その談笑に加わる。大和田さんの出身地である福岡の方言の話やら何やら。何しろ小さな店だから、その後に来た人も席につけば自然にそれに加わるカタチで、笑いが耐えないアットホーム。

「そろそろはじめましょうか」店内の照明が少し落ちる。壁際の、少し背の高い椅子に腰掛けただけのステージ。

前半は大和田さんひとりでの朗読。読んだのは短い三つの物語で、二つめと三つめはオリジナル。妙齢の女性の私小説的ストーリーは、朗読する彼女とイメージがダブる。等身大のリアリティさもあって、わりとブラック寄りの展開なんだけど、すんなり心に入る。

終演後に話したなかで、「感覚が女性らしいな」って(男性のそれとは違うという意味で)感じた部分があって、お客さんのなかで男性の方もやっぱりそういうことを言ってたんだけど、それは私小説的だからこそアリなんだろうと思った。

これも後で言ってたことだけど、本人、訛りが出てないかを気にしてたよう。役者さんだとなるほどそういうのって気になるよね。で、イントネーションに「ん?」って思った箇所があったのは覚えてたんだけど、いくつめの話のどういうセリフだったかは思い出せなかった。違和感抱くほどそんなに気になったわけじゃないんだけどね。

後半は大和田さんと赤星さんの二人で「ワニ」。

「歳をとった鰐の話」は、赤星さんメイン。そのパートナーをいろいろな人が演じるかたちで、開店から何度も繰り返してる演目なんだそう。常連さんには「『ワニ』だから来た」なんて方もいる様子。

ジャンルは『童話』で、作者が息子のために語った話ということみたい。でも内容は何とも言えないシュールさで、童話にありがちな戒めや教訓の要素ってあんまりない。そこが逆に想像を膨らませる、っていうのが、これを朗読劇としてやっている理由の一つらしい。

赤星さんの語りは外見どおりに力強く、迫力に満ちてる。ワニの漏らすシューッという呼吸音や、ぎしっ、ぎしっ、と身体を動かす様。大和田さんは途中出てくるタコの役なのだけど、これが何ともチャーミングなの。読みながら見せるふわっとした表情もよかった。

はじめにかまをかけられてたとおり、終演後は何とも一言ではいえないような感覚で、童話らしいインパクトの強さなんてあんまり深く考えない方がよさそうとも思える部分も多いんだけど、あえて考えるとその行間にはいろんな意味がふくらみそうで、そこがとても面白かった。

終わった後は雑談タイム。前述のみたいな感想戦もしたけど、朗読そのものに関係ない話がけっこうな分量のよもやま話・茶飲み話。これがなんだかえらく盛り上がってしまった。常連さん曰く「いつもこんなに話し込むわけではない」らしい。ほとんど初対面な人々の集まりなのに、そういう壁がぜんぜんないのは、これもまた不思議な時間だった。大和田さんのキャラクターのおかげもあったんじゃないかしら。

結局それが11時の閉店まで続いて、それまで誰も途中で帰らなかったっていう(笑)

僕は見事に終電帰りになったんだけど、翌日の仕事への影響的な部分を除けば、イベントとしても空間としても、すごく居心地のいい楽しい時間だった。下北沢はジャンル的にそんなに行く街ではないんだけど、行くときは気にしておいて、お茶を飲むだけでもまた足を運びたいなあと思ったり。

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