久しぶりに無断使用案件。SNS上で、写真を無断でイラスト化され、それを指摘したらアカウント削除で逃亡されたという顛末。
ちょっとおもしろかったんで記事にしておく。
ちなみに相手はもういないんで、当事者名は今んとこ匿名としておきます。諸々のスクショは取ってあるんだけど、SNS規約的に載せていいのかわかんないからマスク。そのせいで記事の説得力が弱くなっちゃったのは残念だけどしゃーない。
これって僕の写真じゃないの?
事の発端は、過去に撮影したことがあるモデルさんのリツイート。彼女を描いたイラストだったんだけど、どうにも違和感がある。イラストの元になった写真が、過去に僕が撮影したものだと一目でハッキリわかったの。
そんな許可は出してないんすけど。
許可のない二次利用は著作権違反デス! 写真→イラスト化であっても、元写真が明確にそれとわかるようなものは著作権の侵害に当たりマス!
とはいえモデルさんがリツイートしたものだったんで、「モデルさんが同意したのかな?」と、最初はそのままスルーしようかとも思ったんだけど、虫の知らせっつーか、モデルさんへ問い合わせてみた。
なぜかモデルへ許可を取ってた
モデルさんによると、描いた自称素人絵描きのD(仮名)からコンタクトがあり、モデルとしてはOKしたけど、どの写真を使うかまでは指定がなかったのだそう。広くモデルやってる方だから、どの写真か決まらないと許可を得るカメラマンは決まらないのだ。
そこでDが先走って、イラストがずどんと出たという体。
そもそも、そのパクられた写真、僕がツイートした写真だっていうのはわかってた。モデルさんへ掲載可否判断のためにまとめて送ったなかの一枚なんだけど、彼女がツイートしたのは別の写真で、その写真はツイートしてない。僕のツイートでは、モデルさんの名前やメンションはなく、顔タグとしてモデルさんを付けてるだけという。
元写真のツイート主が僕なのに、僕へのコンタクトがないっておかしくない?
証拠のスクショ等を集めた後、そんな内容をDへリプライとして送った(18:20)。相手の素性、年齢、性別、悪質性などはわからないので、返信からそれを探る意味もあってそこそこ硬めの、いきなりガツンと行くのは避けた文面にしたつもり。
著作権に関する基本的な知識はお持ちですか?
元写真のツイート主である僕(撮影者かつ著作権者)でなく、わざわざ被写体であるモデルへコンタクトを取ったのはどういう思惑ですか?
著作権が侵害されてもモデルに善かれと思って沈黙している撮影者がいることを想像できますか?
豆知識。写真の著作権は撮影者にある。モデルにあるのは肖像権。たまに撮影会主催であっても「著作権はカメラマンとモデルの双方にある」とか言っちゃってる人がいるけど間違い。撮影が共同作業だからって飛躍しちゃいけません(モデルへの配慮は必要ですよ!)。
どうやらわかっててやってたらしい
返事はDMへだった(18:38)。けっこうちゃんとした文面で子どもではないよう。但し、いきなり平謝りで、許可取ってなくてすみません、ツイートは消しますという内容。いやいや、そんなことひと言も言ってませんって。理解が早すぎるでしょ(笑) まるで想定問答。他者からも見えるようにとリプライにしたのに対して見えないDMで返してきたことも含めて「こりゃあクロだな」と。19:03に返信「出来ればDMでなくリプライにしてください」。
リプライへって言ったのにまたDMが来る(19:12)。なぜ「しっかりお詫びさせていただきたい」とDMになるのかは理解不能だし、逆に不誠実だと思ってリプライを返す。
こちらが「DMでなくリプライで」とお願いしているのに、当該ツイート削除した上で再びDMでは、フォロワーに醜聞がバレないように腐心しているとしか見えず不誠実と感じます。そもそも僕への謝罪がほしいのではないし、こちらの質問には答えてもらっていません。
実はこの間、Dのアカウント名でググったりしてたのだが、検索1ページ目にもう危なっかしい単語がちらほらと。
- 「ワガママな素人絵描き」
- 「可愛い娘しか描きたくない」
- 「琴線に触れたタレントさんを勝手にイラストに」
- 「素人が描いてますので大きな心で見てください」
- 「#勝手にイラストごめんなさい」
自分がやってることを「勝手」だと自覚してるとか、「素人」を強調する予防線張りとか、「こりゃあ真っクロだな」と。
その後やっとリプが返ってきた。「ご迷惑をお掛けした」「悪意があったように思われたなら残念」しぶしぶという感じなんだろう。内容は通り一遍のお詫びだが、さすがに悔しいらしくわずかに逆ギレしていて、反省は口だけだよねと思わせる。詫び状のはずなのにそういう感情が洩れてしまってるのが何ともいえない。
そこを指摘する強めのリプを送った。
「ご迷惑」は軽い言葉ですね。著作権の侵害は違法行為です。犯罪です。十年以下の懲役もしくは一千万円以下の罰金です。
悪意云々はこちらの理解が悪いと責任をなすりつける発言で、著作権侵害以上に不愉快です。こちらの質問に答えないのは都合が悪いからでしょうか。過去発言をみると「大きな心で見て」等、もともと遵法精神に欠けた方なのだとお見受けします。知っててやった。バレなきゃいい。同様の手法で描いた過去イラストを見直す様子もない。「思い至らない部分」は過去形ではなく現在もおありでは。
そしたら、その後すぐにアカウントが削除された。唐突すぎてびっくり。思い切りよすぎるだろ。僕は消せなんて言ってませんよ(笑)
感想
Dがやったことを改めて書くと、
- 著作権者(カメラマン)の許可を得ず
- 写真をトレースしてイラストを作成し
- 自分の作品として(ロゴまで付けて)SNSへ掲載
- モデルへはメンションし、カメラマンへは連絡なし
- 権利侵害を指摘されたらアカウント削除して逃亡
最初見たときは模写(※模写もNG)だと思ったんだけど、Photoshopで重ねてみたらトレースだった。どうりで最初に指摘したとき、「事後だが了承してもらえないか」っていう方向の和解案なしにツイート削除しちゃうわけだ。トレースなんか誰も許可するわけない。
ま、トレースを模写って勘違いされるくらいの画力だったからこそ、これまで放置されてきたのかもね。イラスト化ってどこまでが権利侵害かなんとなく判断つきづらいし。
僕の件がトレースってことは、他のもトレースだったんだろう。モデルにだけ許可を取る姿勢も今回が初めてとは思えない。
アカウント削除を想定していなかったのはミスだった。SNS上でいろんなモデルさんにも絡んでたし、性質はどうあれイラスト描きながら育てたアカウントなわけだから、あっさり手放すとは思わなかった。過去を掘られるくらいならリセットって判断したのかも。過去掘ってないから知らんけど。
D宛のリプは5月まで遡れるんで、5月にスタートとして、4ヶ月くらいで愚行は終わったことになる。この間よくもまあ誰にも指摘されなかったなと。それとも指摘はあったけど、僕宛みたいにDMでこっそり謝罪して外面は濁してたのか。
イラスト描かれたモデルさんには褒めてる人もいるけど、褒めてれば褒めてるほどなんだか物悲しい。ただのトレースだし。そして、写真撮ってくれたカメラマンへの配慮が足りないモデルさんも少なくないんだろうなーと。撮ってもらった写真とDのイラストを並べてツイートしちゃってる子もいて、そんなの見たら僕なら凹むわーと思った。何で凹むかは各々考えてください。
アカウント削除されちゃったから事は終わっちゃったけど、ホントはこの後「使用料+慰謝料払え」って展開に持っていきたかったのを記して、この記事は終わりにします。あー、儲け損ねた(笑)
著作権に詳しくないのでわからなかった点があるのですが、法的に二次利用者から使用料と慰謝料は貰えるのでしょうか?
その人がお金を儲けていたら取れるのはわかりますが、利益がなくても取れるんでしょうか?
またファンアートをTwitterに載せてる人達は沢山いますが、その人達からも使用料と慰謝料を請求出来るものですか?
著作権の侵害はそれ自体が犯罪ですから、理屈では処罰できますが、訴えを起こすだけの見返りが期待できるかは侵害の度合いだと思います。使用料の支払いをまず交渉するのが一般的かと。
写真の場合はGetty Imagesあたりを使用料の根拠にするのが多いみたいです。SNSが広まって、2018年にアサヒカメラから「写真好きのための法律&マナー」というムックも出ました。
ファンアート等の二次創作も厳密に言えば著作権侵害ですが、著作者のさじ加減で許されている範囲が違ったり、業界の雰囲気等もあるので状況によるかと。