上野にある古民家での小さなお芝居。さんらんの公演は去年の年末に前回公演「レストラン・エスペランサ」を観にいって、それは日本にいるクルド人の問題も絡めたお話だった。今回も外国人、技能実習制度のお話……ちょっとひねった仕掛けがあったのだけども。
さんらん第20回公演「お針子マーチ」
2025年5月15日 14:00~ 上野桜木・市田邸(国登録有形文化財)
作・演出 尾崎太郎(さんらん)
出演 今泉玲奈(劇団ひまわり) / 小黒こまち / 坪倉楓果 / 若林正(さんらん/大沢事務所)
地方の縫製工場。遠い国から働きにきた技能実習生の女性三人と、工場の社長。
技能実習生の1人が寝込んでいる。取引先のデザイナーに捨てられ、風邪薬を飲んだのだ。デザイナーのしごとを受け続けるかどうか、技能実習生たちと社長の意見はぶつかり、溝が浮かび上がる。
お前たちは職人、家族!と社長。私たちは搾取されている!
♪みんなが喜ぶ、素敵なシャツは、私たちが縫ってます♪
上野は3月の桜フェスタで来たばっかり。すっかり暖かくなり、人手はさらに増えて、そのときに寄った園内のカフェは大混雑。少し先の上島珈琲店を狙ったもののそこもやっぱり空席はなく、しょうがないからサンドイッチ買って路傍のベンチで簡易ピクニックした。ひなたぼっこも悪くない。
市田邸は写真で調べておいた以上の趣。靴を脱いて上がると舞台は8畳間、ふすまぶち抜きの隣の間に簡易的な段差が作られて、置かれたスツールの客席になってた。向かって左手には縁側の庭が見える。使わせてもらったお手洗いはそこの奥にあったんだけど、便座だけ新しいのがめっちゃ違和感(笑)
上演時間は40分間とかなり短め。ワンシチュエーションで、登場人物の4人はほとんどみんな出突っ張り。ずっと揉めてるんだけど、そこまで深刻でもなく(いや深刻さは人それぞれなんだけど)、みていてちょっと笑っちゃうようなシーンも多かったり。
お目当ての小黒こまちさんは開始早々から最後までずっと怒ってて、でも怒り方というか人柄というかが「キーッ!」と金切り声を上げるのじゃなく「プンプン!」って感じというか、怒ってはいるけどそんなに場の空気を悪くさせるんじゃなく。それって演出の狙った方向なのか、役者のキャラなのかはちょっとわかんなかったけど。
そんな怒る子に加えて、泣く子、なだめる子、怒られる社長さん、4者の構図は基本そのままずっと揉めてるのが、すごく私的な話でもあり、社会風刺的なテイストがまぶされてる話でもあり。結局なんにも解決せず揉めたまんま終わった気もするんだけど、その終わり方というか、各々の終わらせ方がドラマなんだよなっていう。それぞれの行進曲。
時間が短めなのを感じさせない、楽しめるお芝居でした(もしもポルシェのオーナーだったら心底楽しめたかしら?って笑)。
会場が古民家っていう、縁側から庭にかけてガラス越しにみえるのや、裏の部屋との壁の薄さとかも演出に使っていて、そういう細かな芸はいいなあと。置いてあるマンガのタイトルとか、大量にあったぬいぐるみのうちポテトヘッドがトランクに挟まれて潰されるときのいい顔とかも。
あと、古民家はちょっとだけ庭とか屋内とか眺めたんだけど、やっぱいいなーって。お芝居の舞台としてだけじゃなく、撮影したいなーって思っちゃうあたりで急に写真好きな属性が覗いたりして。
その後、自宅で肉団子スープ作りました。お芝居の中に出てきたワードから実践しちゃうのはオタク気質だわねえ。